FC2ブログ

アトリエ水平線より

渡会審二の写真日記

11月3日「白い魔法」はもうすぐです。 

0627.jpg

前回のブログにも広告の短期決戦の仕事と作品作りは違う、また定期的に作品創作活動をする、しないでは作家性に大きな違いがあると書きました。今日はそれを説明します。
以前、写真展とは良い写真が何点か並んで会場を埋め尽くされていれば写真展は成り立つ、写真展とはだいたいそう云うものだと思っていた、多分そう考えている人が大半だと思う。
今は考え方ががらりと変わりもうそんな考えはしていない、ボクにとって写真展とは映画を作るように物語性のあるもので、作品は並べるのではなく作品を組み立てる物と考え、その感覚はまったく違う。

広告の仕事とは決められた予算と日程と掲載日があるから未知数な技術、ぶっつけ本番の考え、実験的な考えはだいたいあり得なく結果がハッキリしてる技術を使うのが普通です。
でも、いつもそればかりでは作家性が錆び付いてしまいボクは作品作りでは時間がたっぷりあるし実験の連続です、そこで出て来た新しいことに突っ込んで行けば良いのです。また使うアタマの構造も違い決められた枠なんてまったく無視して自由奔放に考えられます。
つまり広告は決められた制約の中で作って行くけどもらえる撮影料は一般に高い、でも個人的な作品制作は自由奔放ですがお金を使う。

ずーっと以前は作品を作るとは始める前に、何をどう撮って行くのか?だいたい筋書きは前もって決めて、その設計図に沿って積み上げるように作って行く物と思っていました。実際そうしてる人はたくさんいると思う。
ボクの場合、今はもうそうしない、例えば今回では、まずユリで撮ってみようと始めます。そして撮った作品を何度も見続けるうちに次は何をすべきかだいたい見えて来ます、もし何も見えなかったらじーっと待ちます。
そしてある日、ふっと「踊り子」が湧いて来ました。始めはそれが並んだらどうなるのかボク自身も良く分かっていなかったけど何人も踊れそうな人を探して行くうちに自分の中でその意味がハッキリして来ました。
イメージがハッキリして来たころにこれだと思う人にやっと巡り会えました。初めてモデルさん本人に会う時、妹もオマケみたいに付いて来た。
衣装担当の岡田さんが、それなら2着分作ることにしてくれて姉妹をそのままツインで撮ることになった。後にそれが今回の作品に大変大きな意味を持って来た。このように制作のフットワークが軽ければまさか意外な出会いに恵まれる。

作品制作日の残された日程はあと1週間くらいになり連日追い込みプリント作業をしています、上がったプリントを額に入れ壁にかけて実際の並び方に合わせて並べて見ます、左右の隣に来る作品をここで並べてじっくり観察します。
敢えてトーンがそれぞれ作品によって基準がバラバラです、ユリは正当派の上品なプリントを意識し、風景はトーンをやや締まりのない昔風なトーンにしました。
プリントトーンは敢えてチグハグでバラバラにしましたが作品が集まった時にピタっとハマるように狙ってあります。だから今回のプリント作業は大変手間がかかる作業でした。
また今回は単純なただのモノクロではなくかすかに薄くセピア調色が掛けてあります、調色の時点で失敗する事が何回かあってキレイに仕上がっていたプリントをダメにしてやり直しは何度もある。これがイメージのないただの作業だったならもう気が狂うくらいヘトヘトになりそう。
そこはこれまでかすかに見えるイメージを頼りに1年かけて積み上げて来た物だから、狙った思いがきちんと出るまで根気勝負の連続です。
先にも書いたように作品制作は広告ではなく時間内なら作り直しが利くので一切の筋書きを持たず直感と感覚だけに任せて作りました。バラバラ、チグハグに作った作品は感覚がブレていなければ最後には必ずすべてが合致すると信じています。
現実思考の計算ではどうしてもあざとさワザとらしさが出て来ます、でも直感的なバランス感覚は官能的に仕上げる力を持っています、感覚とは上手く使いこなせれば摩訶不思議なもので現実思考では作れない世界を見事に描いてくれます。
今回ほどそれがしっかり描けた事はこれまでにはなかった体験です。これを見れば今回のタイトル「白い魔法」の意味が分かるかと思います。