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アトリエ水平線より

渡会審二の写真日記

鎌倉の暮らし 

初めて鎌倉に移ってきたのは、もうかれこれ30年くらいの月日が経ち月日の流れるのは早いものです。
未だに名古屋弁が抜けきらない僕ですが名古屋で過ごした時間と鎌倉で過ごした時間は、圧倒的に鎌倉の方が長い。
ここに引っ越したいと思い時々街の下見には来ていた、奥さんはもっと早くからこっちに引っ越したいと切願していたけど僕がまだ写真一本だけでは食べていけずバイトに頼らないと生活が成り立たない、前にいた所の方がバイトには有利で来たくても来れなかった。
ある時ついに鎌倉に移って来た、最初に住んだのは扇ヶ谷、鎌倉ではオオギガヤツと最後にツを付ける。鎌倉では山と山の間にある谷間のことを谷戸(やと)と言い、あちこちで◯○ガヤツという地名がある。
最初にそこを選んだのはたいした根拠があったわけではない、ただ駅前の不動産屋にフラリと飛び込んで、では行きましょうか?と連れてこられたのが扇ヶ谷だった、ただそれだけだった、不動産屋さんは始めから「この物件は家は風情があって良いし、この辺りの環境も素晴らしく良いんだけど、ここの家はね、冬に陽があまり当たらないけどそれでも良い?」と念を押された。
正直言って不動産屋の言うことがよく分からなかった、こんな素敵な家と環境、迷う理由なんかどこにあるのか?と耳を疑った、どんな理由があろうがここは迷うことなく選ぶしかないと思った、そこに目が眩んで飛びついたのは平屋建てだったけど家の作りがステキだったことと周りの環境が本当にステキだった。
とにかく生活を開始した最初の気分は「良いところに引っ越してきたな〜、本当に来て良かったな〜、いったい何が問題で不動産屋はあんなことを言うのかまったく意味が良く分からないね〜。」とすら思っていた、あのころ東京辺りで一戸建ての家に住むこと自体が(借家であっても)夢のようだった、でも実際に1年くらいそこに住んで事情が徐々に分かって来た、なるほどそういうことか〜と、、、、。
鎌倉というところの湿気の凄さはハンパじゃなかった、特に扇ヶ谷辺りは梅雨時になると壁という壁、崖という崖がコケ類、シダ類が余すとこなく生い茂る土地柄だった、靴箱なんかちょっと数日、閉めっぱなしにしたものなら、たちまち革の靴はカビだらけになってしまう、扇ヶ谷のすべてがそうじゃないかもしれないけど、僕が住んだところはそういう場所だった。
また冬がまさに大変だった、不動産屋さんがここに入る時、「本当に大丈夫?」と念を押したその意味がやっと分かった、源氏山公園のすぐ裏手、冬の間は山陰で陽が当たらない、昼間から電球を付けた生活をするしかない、それにその寒さといったら1日中ストーブをガンガン焚き続けないと体が持たない。
一見、パッとしない団地でも中に入ると陽が燦々と差し込んで居心地が良い、暖房なんか建物が大きいから、昼間に備蓄した熱は案外夜まで残って結構暖かい、でも僕らの住む環境は一見、ステキだけど快適とは言いがたい、いざ住むとまさかこんな問題があるとは気がつかなかった。
それは鬱蒼とした裏山の話だけど、扇ヶ谷は鎌倉の中でも湿気が多い、オマケに鎌倉の中でも冷える場所らしい。この時に学んだ教訓は鎌倉住まいの土地選びは地名のイメージで判断するのは絶対ダメだ、稲村ガ崎とか由比ヶ浜と資料で聞くとすごく良さそうに感じるが、自分自身の目と冷静な判断でしっかり日当たりとか環境条件を良く見ること。住所は稲村ガ崎でも山陰の稲村ガ崎だってちゃんとある、たしかに海は近いが日当たりが燦々とあるわけではないからそこは要注意です。
鎌倉はそんなに広く大きな街ではない、でも狭いわりに意外に多面性を持った街でこんな街は関東圏ではそんなにないと思う、太陽が燦々と輝く海辺の鎌倉、緑に囲まれ鬱蒼とした谷戸の鎌倉とでは雰囲気も流れる風もそれなりに違う。
世間では鎌倉暮らしに憧れて、鎌倉に家を買いたがる人が後を絶たない、ここで一つアドバイスすると少し余裕があるなら、いきなり物件が出たからと言って飛びつく前に住みたい候補地を一度借家暮らしを勧める、そこで判断する、それから決めても遅くはない、買って問題が出るよりはまだ良い。