FC2ブログ

アトリエ水平線より

渡会審二の写真日記

画像を見て、うっそ〜!と言った瞬間 

a00101.jpg

暗室のバットから浮かび上がった画像を彼女は見て思わず「うっそ〜」とため息が漏れた。
そんな気分を僕のワークショップで体験してくれたら、今回のワークショップは成功だと思った瞬間でした。
この写真は見方次第ではただのグラス写真です、でもそこに気分が写ってると見てもらえたら良い、でも何の取り柄もないただのグラス写真にも見える、紙一重です、だからこういう写真はどう撮って良いのかその微妙な境界線が見えずそれを自覚的に撮るのはハタで思ってるほどカンタンではないのかも知れない、これがいつでも自由に撮れるようになるにはそれなりのメンタルな積み重ねが必要かも知れない。

最近久しぶりにワークショップをしました。
もともとこのワークショップを始めたきっかけはモノクロ暗室ワークショップが目的でした、でも実際にやって受講者さんのネガはあまり条件が良いとは言えないネガばかりで、これでは良いプリントではなくただの月並みなプリントしかできない現実に気がついた、まずはきれいなプリントのためのネガを作る撮影から始めリニューアルしたのきっかけでした。
最初はきれいなプリント、階調の整ったプリント法を指南するのが狙いでした、はじめに2時間くらい光の捉え方、考え方を口で話し手本になる写真を見せたり一通りの基本を説明をして、後は各自、自由に好き勝手に撮ってくださいというやり方でした、でもそれでは受講者たちにとってその指導は不十分ではないか、、、と少しづつ思いました。
そもそも受講者さんのレベルでは自由に好きに自分の思い通りにやること自体がまだ難解です、そこには躊躇するだろうし、それができない人たち、そもそも自由に撮ること自体がまだ自立していない人たちに自由にやってくださいと言ってもそれは難しいことだとだんだん分かって来ました。
ただ僕は自分の経験を思うと、あれこれお膳立てする指導は好きになれないし、肝心なところは自分で試行錯誤やって自分で気がつかなければ意味がないと思っていたからそのやり方を選んだわけですがどうやらみんながそうではないようです、ある程度のお膳立ては最低限は必要なんだと思い始めました。
最近感じるのは世代の違いからか、個性の違いか、資質の違いか、みんながみんな僕が辿ったルートではなく自分であれこれ想像したり試行錯誤なんかしないことが分かってきました。そうなると写真を教えるにしてもどこに重点を置けばいいのか、何を教えなければならないのか、やりながら手を変え品を変え毎回のワークショップは結果的にポイントが違います。
それでここ最近の教え方、特に今回の魔法植物園の個展以後は、モノクロの階調作りよりも光の扱い方だけでここまでファンタジー世界が描ける事実を目の前でやって見せました、今回はそんな講座になんとかなったと感じました。

7月21日に「モノを見る目」で書いた話ですが、僕の師匠だった有田さんは外遊先で集めた細々したガラクタを紙の上に置いてさっと撮ると、当時の助手だった僕には信じられない世界が写っていた、それが僕の写真の方向性を変えた話を書きましたができない人にしたらまさに魔法です、でもそれにはやはり「やり方」があります。
やり方とは誰だってできるカンタンなやり方から深い理解がないとできないやり方までレベルランクは様々です。
理屈ばかり書いても仕方がないからまず画像を見て欲しい、こういうモノを撮る時の大事な心構えはグラスを撮るという考えは捨てることです、撮るのはグラスではなく、グラスがある風景を撮るということです、、、、、世の中には写真を何年もやっていたとしてもこのグラスを撮るか、グラスを囲む空間を撮るのか、その違いの概念がない人が殊の外多いのが実態です。
暗室のバットからこの画像がフワ〜りと浮かび上がった瞬間、彼女は、はっとして「うそ〜」と思わず声が出ました、 これなんだ〜、、、、、と思った瞬間だったようです、これまで彼女にとってこんなことは身近にはなかったらしく部屋の中で机にグラスを置いて光を操るだけでこんな世界が撮れることにびっくりしたようです。
机に差し込む外からの光をマット化させるため、机の周りにデュフューズ幕を張って、それで机の周りを囲んでグラスを撮りましたが、彼女にとってはたったこれだけでこれが撮れてしまう事実にかなり衝撃的だったようです。
こういうことはどう説明すればいいのでしょう?僕の場合もこれについていろんな実験、経験、試行錯誤を通して発見したり探したりを繰り返して時間をかけて見つけて行ったので、ここで言えることは、写真の撮り方は物体としてグラスを撮っただけで終わるか、そこにグラスがある風景として、その空気を表現するか、では同じようなモノを撮っていてもまったく違うモノが写るということです。
ここで言いたいのは風景というのは何も風景ばかりじゃなく机の上にも風景と空気がちゃんとあることです、それは光と階調の捉え方次第で捉えることができるしファンタジーがそこにあると僕は思っています。魔法植物園はそんな気持ちから作られた作品です。
それとそこにどんな気分を写したいのかをはっきりさせれば方向は見えてくると思います。