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アトリエ水平線より

渡会審二の写真日記

親方から受けた手ほどきは今にして思えば貴重な体験 

一昨日書いた内容をもう少し踏み込んで書きます。
僕のカメラマンとしての仕事は職人仕事と人から言われることが時々あります。
自分で自分をそんな風に思ったこと、自覚したことはまったくない、それに職人としては僕は前に書いた通り失格だと思っています。そうではなく今の人がモノを作る能力をあまりにも失いすぎたと思う?必要な物は、あまり細かいことにこだわらないならお金さえ出せばなんだって手に入るから作る必要がない時代です。
必要に迫られ自分で考え素材からモノを作る、刃物を研いで木を切って削ってモノを作る、バーナーを使って金属を加工する、素材を加工したり、創造したり、魚を下ろしたり、ミシンをかけてモノを作ったり、今の人たちは既製品を使うことばかりに慣れすぎて素材から作ることが日常から遠ざかってしまった、これではモノ作りセンスなんかなくて当然です。
一昨日も書いた通り僕は家具職人のところに入門し木工について一から手ほどきを受けた、まず木について学んだ、木には硬い木と柔らかい木があり、硬い木、例えば拓殖(つげ)なんかは櫛に使われ、紅葉樹のカシとかブナとか硬い木は椅子に使われる、針葉樹のヒノキはスギより硬く腐りにも強く耐久性にも優れているから高級な建造物に使われる、スギも使われますがヒノキに比べて格下扱いされている、でも湿気吸収にスギは優れているので畳の下の床材に使われるとか、木の個性によってそれぞれどう使い分けるのか、何材が適しているのか、また同じ木材でも硬い部分とそうでは無い部分があったり、真っ直ぐで捻りクセのない木、捻りクセが強い木、その見分け方、木について様々なことを親方から手ほどきを受けました。
また道具一つ取っても、職人の下できちんと下積みした者と日曜大工では道具を使いこなす技能には差があります、それはいくら手先が器用で達者だとしても職人仕事は素人では絶対に敵わない境界線があります。僕は入門してすぐカンナの手ほどきを受けました、カンナはただ扱うだけなら特に難しい道具ではない、でも自分でカンナを良い状態にまで調整ができるかが素人と職人の違いです、カンナを扱うには刃物研ぎが出来なくてはなりません、でも案外知られていないのは、カンナ台調整(木の部分)カンナが使いやすい状態に刃物と同じように調整されているのか、素人大工でこれがきちんとできる人は滅多にいないと思います。
このカンナ台直しはものすごく難しい、台直しがきちんと出来る、刃物がきちんと研げる、これができなければカンナは使いこなせないも同然です、しっかり調整されたカンナがあれば素人だって手先が器用なら薄い木くずはさっと出ます、この秘密は掛け方にあるのではなくカンナ調整が自由にできるか、どうかです、これは日曜大工(素人大工)で出来る人はほんとんどいないと思います、しっかりした職人から手ほどきを受けて、それができるまで日々修練を積まないと多分無理でしょう。
僕が修行した木工屋はその時は店舗家具をやっていましたが親方は元々はちゃんとした正統派タンス家具職人だったからうるさい親方でした。そこにいた時はうんざりするだけの毎日でしたが、3年の間に身に付けたことを今になって振り返ると、あれは今にして思えば貴重な時間だったんだなと感じます。
特にそれを痛感するのは暗室仕事の時です、もし自分があのまま職人世界を知らずに今日まで来たなら、自分の暗室ワークは今のような考え方になっていただろうか?やはりどこかでモノ作りをやって来たからできることってあると思います。

フィルム全盛の時代でもモノクロ暗室仕事がさっぱりできない人は意外に多かった、モノクロ仕事は自分でやらずラボに外注するばかりで暗室仕事はまったくできないカメラマンがほとんどだった、暗室なんて普通持っていないし、そういうカメラマンにとってモノクロ写真はただの白黒写真であってモノトーンに対する愛着すらないんじゃないのかな?僕はモノトーンが根っから好きだったからアトリエを作った時、暗室はもちろん忘れずに作った。
要するに写真とはモニターで見ることが最近では主流になりつつあるけど本来写真とは印画紙で額装して見るべきものと僕は思っています。
時々人に暗室ワークを教えていました、教える度に毎回感じていたのは物作りの心構え、そのイロハがまったくなっていない人が多いと感じました。僕は自分が職人環境に3年間いたせいか、例えそれが自分にすごく合わなかったかったとは言え、モノ作りのイロハをきちんと習って来たんだなって思います。
それに対して時代感覚の違いから考え方はいろいろとあると思います、むしろ僕らの経て来た色眼鏡で物事を見るのはどうかと思う部分もあります、今の若い子たちは手でモノを作るセンスに欠けるかも知れないけどパソコンを駆使して次々に新しい概念、新しいモノを生み出して行けるセンスを持った子たちも次々に台頭しています、前回も書いたけど硬いアタマだけではダメだし、やわらかいアタマだけでもダメだし、その両方が自由に使いこなせたら一番いんだろうけど、、、。