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アトリエ水平線より

渡会審二の写真日記

平行する二つの価値観 

最近、助手を終えたころについて書いて、あの当時の記憶がよみがえりました、僕がついた2人のカメラマンの考え方、生き方の違いについて書きたくなりました。
まず最初に、、、これは印象派の画家の話だと思います、画家の名前は多分セザンヌかマチスだったかな?と記憶していますが、その画家がまだ修行時代、美術学校で二人の先生に出会いました、一人はデッサンを徹底的に重視します、もう一人は技術よりも表現力、それには心が自由であるべきだと指導した二人の先生の違いでした、画家は両方の考えを学べたのが良かったと後に語っていました。
僕が写真家修行してたころ問われていたのは広告写真をするなら、まずテクニックを身につけること、感性が大事なんて言うけど所詮はテクニックだ、、、と言われました、自分としてはあまり信じる気になれない意見だなと思って聞いていたけど、結局僕は感覚を磨くことを選んだ、選んだというよりそれしか選べなかった。
テクニックを学ぶにしても、それはこういう表現がしたいからテクニックが必要になるのが順序で、始めらテクニックと言うのはどうにも気が進まなかった。
僕はスタジオマンだった時、Sさんと言うカメラマンに声をかけられ、そのままSさんの助手に取ってもらった、入ったばかりのころはSさんのところにいるのが刺激的に感じていて、特にモノクロ暗室はすごく学ぶものがあったりで、Sさんは世の中的に見たら多分優秀な広告カメラマンだったと思います。
仕事は名の知れた広告はほんとんどなかった、どちらかと言えばパッとしない広告が多かったけど安定して仕事はあったと思います、でも僕からすればどこかもの足らなかった、有名広告に拘っていたわけではないけど、人間がどこかキラッとくるようなタイプではなかったけど、しっかりしていて、感情の起伏はあまりなく、毎回安定して納品するので、仕事を出す側には不安要素もなく、やりとりもきちんとしっかりしていたし、物事の管理もきちんとしていたから仕事には困ることなく安定してあったようです。
ただ僕から見て表現者として発想の豊かさ、着目点のおもしろさ、アーチストとしてキラリと輝くような才能はあまり感じられなかった、何も知らないで入ったばかりは刺激的だったけど次第につまらなくなって行った、Sさんが頻繁に僕に言った口癖は「きちんとしていなさい」だった、きちんとしてることと、良い写真、面白い写真、魅力的な写真を撮ること、これは全然別の問題に思っていたから、僕にはその言葉はどうもあさってに聞こえて仕方がなかった。
今にして思えば、広告というものが何もわかっていなかったんだなと思う、半年くらい経ったころ、自分がもはやそこに鮮度を失って、相手も僕がイヤになったのか、「渡会くんはここには合わないよ、もっと作家先生のところに行ったほうがいいよ」と言われ僕はそこを止めさせられた、今にして思えば温情のある方だった。
行き場を失って途方にくれていたところ、こんどは有田さんという写真家につけた、僕はこの有田さんとの出会いは大きかった。多分僕は有田さんと出会うか出会わないかでは人生は違っていたと思うくらい有田さんの影響は計り知れないと思う。
有田さんはSさんとは真逆だった、有田さんは存在自体から何かを発していると感じるくらいセンスを感じた、仕事もわりと有名どころの広告が多かった、ある時、有田さんが帰って部屋を片付けに行った時のこと、机の上にレポート紙でくしゃくしゃと捻って作られた人形が何体か無造作に並べてありました。
僕は呆然とした、ただのレポート用紙でこんな物にしてしまうその世界観に驚いた、この人は写真家だけど一体何者なんだと思った、それをゴミとしか見えない人は世の中にはたくさんいると思うけど僕には作品に見えた、この人はアタマの中は一体何を考えているんだろう?いつもこんな世界が渦巻いてるんだろうと思った、微笑ましいやら、ホッとするやら、羨ましいやら、笑えるやら、そんな気持ちになった、もちろん片付けないでそのまま帰りました。
広告写真家はテクニックが大事、きちんとしていることが大事、紙で人形が作れることが大事か、さてどっちが大事なのか?有田さんについては7/21のブログ「モノを見る目」で書きました、僕はこの方に出会ったから今の自分があると思っています。
さてこんな風に書くと二人の能力を比較しているように取られかねないです、確かに個人的に好き嫌いはハッキリしていますが、でも物事は好きか嫌いだけで事は前に進みません、芸術性があるから良いと言えるほど世の中は単純ではありません、それにはそれなりの落とし穴があります。
有田さんは数年前にお亡くなりになって時効だから書くけど、有田さんは感性がそれだけ豊かだっただけに感情の起伏もそれに比例して激しかった、気持ちが不安定に陥ることが時々あって助手は誰もその感情に振り回され続けた、時々その感情、不安定、不機嫌に執拗に苛立ちの標的になってそのままクビになったりしていた、それはもう病気そのもので僕もきちんと卒業はできませんでした。
でも今になって両者を見比べると、Sさんはハメを外すこともなく、大きな夢があるわけでもなく、表現は退屈で、常識的でマトモな方でした、その点では有田さんには夢があって写真にその世界観が写っていました、有田さんの世界には何か夢とロマンを感じたし、あの方の横にいるだけで夢を感じられていた気がします。
それから30年近く時間が経ちました、僕は広告を始めてかれこれ20年は経ったと思います、今になって思うのは、大半の広告写真はアートではないのがやっと理解できました、今さら分かったのは遅すぎるかも知れませんが、テクニックが大事だ、きちんとしていなさい、これが大事なんだ、その意味が今さらになって分かってきました、でもいくらそこが分かったとしても、どこまで行っても、僕にはそれはできないと思います。
それはきれいごとじゃなくて、いくら自分に言い聞かせてもおもしろくないことはスイッチが入らないから。

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