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アトリエ水平線より

渡会審二の写真日記

お見送りのあり方、 

先日、近所で親しい付き合いのあった方が亡くなった連絡をもらいました。
その方についてお話しします、Aさんとしておきましょう、Aさんは僕より8つ年上でガンで亡くなりました、家族から送られた訃報によれば、従来の冠婚葬祭のあり方は一切、継承せず、彼らしいやり方を遺言に残しました。
そこに書かれた文章は、彼自身が生前に残した文章らしく、その内容は、連絡が遅れてすいませんでした、これが皆さんの元に届くころは僕はお気に入りのビンの中に灰になって家に戻っていることでしょう、(中略)葬儀はしない、墓には入らない、骨は海に散骨して下さい、と遺言を残して彼は旅立って行きました。

彼の人生について僕が知る範囲で話しします、 Aさんは大学は早稲田慶応ではない、良家の子息御用達の有名大学を出て、就職先は誰もが知る花形企業、会社勤めが好きじゃなく早期退職して海の真ん前にお金がかかったおしゃれな家を建て悠々自適な暮らしをしてた、ちょっと話を聞いただけなら、良家の育ち、有名大学、花形企業、海前のおしゃれな家の暮し、誰から聞いても羨望の人生としか思えない人生を歩いたAさんでした。
ちょうど彼の家が建ったころ、僕らのアトリエと同じ時期で、共通する考えもあって何回か家に伺ったり食事を一緒にしたことがあります、家に一歩足を踏み入れると、家の内装の凝り方たるや、本当に良いものを知ってる人のコレクションを感じます。
海外に行ったついでにじっくり時間をかけながらかき集めた物ばかりです、お金はかかっていますが、お金の力でかき集めたいやらしさはまったく感じない、そこにあるのはドア取っ手、雑貨物、アンティークドアー、水回り金具、彼の趣味の良さを感じます、さらに世代的に本物のアイビーファッションに洗礼を受けたらしく、彼のアイビーは育ちの良さがないと身につかない、何か筋金入りの趣味を感じます。
そんなおしゃれな彼が知らぬ間にガンになって、知らぬ間に亡くなっていたのは、知らせを聞いてちょっとショックでした、またその死後の亡骸の始末の仕方まで彼らしい指示を残しました、この世のしがらみなんか死後まで背負いたくない、残された家族にそんな思いなんかさせたくない、という意思をはっきり残し旅立って行きました。
これに意見と賛否はあれこれあるかも知れない、でも僕も思うのは、墓参りというのはどうもピンとこない、お盆は亡くなった家族をみんなで集まって思い出すこと、それはそれで素敵なことだと思います、それができる家族ならきちんと迎え火を焚いて、ナスの馬に乗ってやって来るご先祖様をお迎えするのはすばらしいことだと思います。
でもこの時生、それができない家庭もたくさんありますし、そういう習慣を知らない家庭、先祖様と縁が薄い都会生活者の私たちにお盆はもはや遠いものになってしまっています。これは動かしがたい事実です。
墓だって、お坊さんのお経だって、位牌も、戒名も、それに何の意味もありがたさも感じていません、僕には高齢の母がいます、葬式はそう遠い日ではありません、実家の墓は遠いとこにあるし、多分、僕は墓参りなんて自分からしないと思います、そもそも遺骨だって何か特別な意味を感じません。
冠婚葬祭のすべてがそうだとまでは言わないけど、この時代、ある意味では葬儀は業者とお寺を儲けさせるだけ、そこに実体なんて無いに等しいと思えて仕方がない。
お金にケチになってるんではない、墓を作れば管理しなくてはならない、何かの度にお経を上げるだとか、永代供養がいくらだとか、無縁仏だとか、墓を残せば残したで、おかしなしがらみを作るだけの気が僕にはします。
Aさんが残した文章は何ともあっさりした、無意味なしがらみを断ち切ったものに感じます、なんせ遺骨を骨壷に入れないで大好きなガラスビンに入れてくださいと残して旅立った、Aさんらしいと思った。

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