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アトリエ水平線より

渡会審二の写真日記

豪邸マダムの趣味 

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写真上は何十年ぶりにウインブルドンに行ったが自分がどの家にいたのかがまったく思い出せなかった。
写真下はすぐ近くのウインブルドンの大きな公園、園内には馬散歩コースがあった。

豪邸で働き始めて、奥さんのことを「マダム」と僕は呼んだ、几帳面ではない、掃除はどこか適当、手早く出来ない、僕がそれらの仕事が明らかに不向きだったのは数日でマダムは気がついた、このままこの子を雇い続けようか、、、、どうか迷ったそうだ、ただ救われたのは「おかしな一致点」で、なんとか置いてもらえた。
そもそもどうして日本人の男の子を募集したのか?
仕事内容は部屋掃除だけに限らず庭仕事も多かった、庭仕事の場合、他に黒人下働きがいた、時には穴を掘らなくてはならない、時には屋根に登って雨樋(あまとい)の掃除、修理もやらなくてはならない、それらは男子じゃないと無理だった。
前の日本人は几帳面できちんとムラなくよく働いたそうだ、しかも日本人に限ったのは、物を盗む心配がない、英語さえ教えたら安かろうが文句も言わず働いた、当時はまだアパルトヘイトが南アフリカで残っていたから有色人種に対する偏見が残っていた時代、でも日本人だけが被差別の壁を超えた人種だった。
先に上げた「おかしな一致点」とはマダムはティーパーティーが趣味な方で頻繁に開いていた、パーティーに使用するテーブルクロスやティーカップは凝っていた、もちろんテーブルクロスとティーカップは毎回違う物を使用し、前回使用したものを次回には一切出さなかった、そのコレクション数は半端じゃなく多かった、それを僕は興味深く見ていたのがマダムには気に入られた。
時々それを引っ張り出してはあれこれ話をするのがマダムは好きだった、前に居た日本人にはその認識は皆無だったそうだ、、、僕は彼とは違ってそれに対する好奇心があった、特にカップには知識と好みと意見が僕なりにあったがそれがマダムとうまく一致し相手を喜ばせたらしい、そして僕を信頼したのかパーティーのカップ選びを僕に任せたことすらあった。
パーティー前日にはマダムは特に念入りにカップやテーブルクロスを引っ張り出して机に並べてあれこれ始まる、これとこれをここに並べたら美しいでしょう?花これが良いかしら、、、、、とブツブツ言いながら庭に行って花を選ぶ、そしてその度に必ず「シンジ、あんたなら何を選ぶ?」と僕にマジに意見を聞いた。
花柄のカップに関して自由に好き勝手に意見が言えたけどギリシャ神話の絵柄カップはもうお手上げだった、その手のカップはマダムに拠ればパーティーの席で神話のうんちく話を一通り披露するようなことを話してくれたが英語説明が今ひとつ分からなかった。
マダムから意見を聞かれた時、躊躇しないで気の利いた意見がサラっと言えたらマダムは機嫌が良かった、もし万が一につまらない意見を言ったら機嫌はあまり良くなかった、理不尽で単純だけどそうだった、僕はマダムの機嫌や顔色を見ながら意見したことはほとんどなかった、わりと思ったことを意見して機嫌を損ねたことはなかったけど、前に居た男子はそうじゃなかった、マダムの顔色を見ながら意見するのがマダムにはそれが非常に気に食わなかったそうだ。
時にはもう少し踏み込んで、マダムの選んだテーブルクロスとカップの組み合わせは良くないと思った時、他のテーブルクロスと違うカップを組み合わせをテーブルの上に並べた、それでマダムを悦ばせ上機嫌にさせたことがあった、その日のマダムは鼻歌を歌いルンルン気分だった、その手のおばさんは日本人にはあまり見たことがなくそれだけでも良い経験だった。
マダムは時々リバティープリントやティーカップの買い物に僕を連れて行ってくれた、部屋で掃除するよりずーっと楽しかった、また昼はどこかでご飯を食べさせてくれたり、今思えばロンドンの貴重な思い出だった。
ついでに書けば、僕はそれまでにカップ知識はたいしてなかったけど自分の好みをそのまま意見にして言えたし、強いて言えばコーヒー店でバイト経験してきちんと手解きを受けていたから、まったく認識ゼロではなかったが、それが役に少しは立ってクビにならず済んだ、でもそこでカップメーカーとかメーカー傾向などカップ知識は一気に広がった。

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