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アトリエ水平線より

渡会審二の写真日記

すべてはこの街で撮ったことから始まった 

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ロンドンの豪邸の下働きはもう少し居たかったけど、僕の適当な働きぶりはマダムの息子には(始めは愛人かって思っていた)評判が良くなかったみたいで結局はある日突然、辞めさせられた、日本人なら何か気に入らなければブツブツ文句からまず始まるだろうけど、、、、そこは何の前触れもなく、いきなり今日から辞めてくれとあっさり言ったことに拍子抜けした。
そんなこと言われたって、まず寝泊まり出来る行き場すらない、どうすべきか迷っていたら当分は友人宅にお世話になったけど所持金やらビザやらを考えてこの辺りが退け時かなって思い僕は帰国した。
さて、次は何の話を書こうか、、、、、、またインドの話になるが今回はイギリス滞在から10年くらい経った時の話、僕の2度目のインドでの話です。
家具職人を終え、カメラマン助手も終えて、、、、さてこれからどうしようか、、、、カメラマンになるにも自分の作品がまだない、これから作品を作らなくては話にならない、小さなプロダクション(撮影を始め写真全般の仕事を受け持ってるところ)の募集を見つけた、そこで暗室プリンターをやりながら休日はスタジオで作品作りができる、当分はそこで腰を落ち着けることにした。
ちょうど結婚したばかりだった、あまりフラフラ出来ない、休みの日は作品を作って早いとこフリーになろうと、連日の残業で疲労は溜まっていたけど、ダラダラしないで自分のケツを叩いてスタジオで作品を撮った、でもそれらの作品は何だか今ひとつしっくり来ない、気持ちが乗らない、思うように撮れない、そのプロダクションに時々出入れしていたカメラマンに撮ったものを見せて意見を聞いた。
カメラマンは僕の顔を見てあっさり言った「オマエは他に撮りたいものがあるんじゃないの?こんなの撮っても仕方がないだろう、、、、こんなことさっさと辞めた方がオマエには合ってるよ」と躊躇なくズバッと言われた。多分合わない場所に居るんだなって思われたんだろうな、、、、、思えば、僕は人生振り返って肝心な分岐点に立って迷っていたら、誰かが必ず躊躇なく、ズバっと「そんなところにいないで次の場所に行け!」って背中を押す人がいた。
そうあっさり言われたら、気持ちが吹っ切れた、辞めようと思った、ちょうど家内も自分の仕事場が連日の残業で精神的に限界だった、これ以上こんな二人揃って生活を続けたところで、、、、これが一体何の意味があるんだろう?と思った、二人で一緒に辞めて気持ちをリセットしたいと、インドに長期の旅に出た。

さて、インドに行ったけど、そこで具体的にどうすれば良いのか、、、、写真を撮るにしても、何にカメラを向けたら良いのかが分からない、どうしたらもっともらしい作品が撮れるのか分からない、カメラマンの助手を何年かやった、撮影周辺の雑務は一通り覚えた、例えばプロのモノクロプリント技術を覚えた、スタジオライトの組み方も一通り覚えた、何をどうすればどうなるのかもまあ大体覚えた、これらは知らないより大きな進歩だ、また広告カメラマンはどう言うステップを踏んで、物事をカタチにするのか、そのやり方も大体分かった。
確かに自分は最先端のカメラマンの撮影現場のいた、助手ではあったけどその場の一人として関わらせてもらった、でもだからそれが一体何なのか、、、、有名カメラマンの助手だったら写真が上手く撮れるわけではない、それらは自分で考えたのではなく所詮は助手であって、それはお手伝いに過ぎない、さてこれから自分は何をするのか?ここで放り出されても自分は何一つ撮れない、何の人脈もコネもない。
インドで何かカメラを向けるにしても、気がつくとインドで名をなした有名写真家の物真似に過ぎない自分を見た、インドで自分は何を見て、何を感じ、何を考え、そこから何を描くのか、、、そこがさっぱり分からなかった、僕らがインドでやっていたのは、ただガイドブックに書かれた観光地を一つ一つ回る旅にすぎなかった、要するにそこらのバックパッカーと何も変わらなかった。
正直な話、そんな僕は自分に焦っていた、日本の生活に愛想を尽かして出たはずなのに、、、、、インドに来ても、ただガイドブックの旅をしている自分を見て、果たしてこんなことしていて良いんだろうか、、、?言葉にならない葛藤が僕にはあった。
確かにインドの現実は日本の退屈な日々からすれば凄まじかった、凄まじいインドを見ても、、、それが一体何なのか、、、それで僕は何を考え、どう反応すべきか、僕はちっとも分からず答えが出せなかった、気持ちはひどく焦った、長い旅に出たけどちっとも楽しくも何ともなかったし、むしろ自分は苛立っていた。
そんな気持ちを抱えたままインドの大都市ムンバイに着いた、たまたま街中をバスに乗っていた時、家内が街の風景を見て、「ここ写真にしたら絵になりそうだね、、」と何気に呟いた、僕はそれを聞いてハッとした。自分の目は自由にモノが見えていない、そんな自分をハッキリ気がついた。
そうか、、、、自分の心は完全に呪縛されているんだなって思った。
と言うか、、、自分はまだまだ表現の訓練なんか何もしていないんじゃないかと思った。
今までこんなスラム街みたいなグチャグチャな街を撮りたい、そんな気持ちはまったくなかった、でももうそんなことを言ってる場合じゃない、今は撮りたいとか、撮りたくないとか、じゃなくて、どうせ今まで何も撮れなかったんだし、今は理屈抜きにこれを撮ってみようじゃないか、、、と思った。

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